ロバート・クラーク・シーガーは、アメリカの引退したシンガーソングライター兼ミュージシャンである。デトロイト地域で成功を収めたアーティストとして、1960年代にはボブ・シーガー・アンド・ザ・ラストヒアードやザ・ボブ・シーガー・システムといったグループで活動し、1969年に初のアルバム『Ramblin’ Gamblin’ Man』（同名の初の全国ヒット曲を含む）でブレイクした。1970年代初頭までに、彼はレコーディングから「システム」の名を外し、他の様々なバンドと共にさらなる成功を目指した。1973年には、デトロイト地域のミュージシャンたちと共にシルバー・ブレット・バンドを結成し、1975年にミシガン州デトロイトのコボ・ホールでライブ録音されたアルバム『Live Bullet』（1976年）で全国的な成功を収めた。1976年には、スタジオ・アルバム『Night Moves』で全国的なブレイクを果たした。スタジオ・アルバムでは、アラバマを拠点とするマッスル・ショールズ・リズム・セクションとも頻繁に協力し、シーガーのベストセラー・シングルやアルバムの数々に参加している。

1976年は、ボブ・シーガーが地域で高い人気を誇るロック歌手から、全米的なセンセーションへと変貌を遂げた年だった。1960年代前半の高校バンド時代から、1968年にボブ・シーガー・システムとしてキャピトル・レコードと契約するまでの15年間の活動、そして1974年にシルバー・ブレット・バンドを結成するに至るまでのスタイルの変遷を経て、アメリカ建国200周年を迎えた頃には、シーガーは十分な実績を積み、飛躍する準備が整っていた。前年にトップ50入りしたシングル「カトマンズ」の成功を受けて、4月にリリースされたライブアルバム『ライブ・ブレット』は、故郷デトロイトの観客を前にしたシーガーとバンドの全力を疾走感たっぷりに記録した作品で、大ヒットを記録。この2枚組アルバムは夏の間ずっとロック・ラジオを席巻し、その成功を受けて急遽次の作品が制作されることになった。同年10月、シーガーはスタジオ作品『ナイト・ムーヴズ』を発表。このアルバムは、『ライブ・ブレット』が彼の過去を総括したように、彼の未来を明確に示すものだった。『ビューティフル・ルーザー』や『モングレル』といった過去のアルバムを駆り立てた熱狂的な激しさは『ライブ・ブレット』で一部昇華され、シーガーは自身の音楽の核心であるソウルフルな部分をより深く探求することになった。アルバムの後半はマッスル・ショールズでのセッション（『ビューティフル・ルーザー』でも起用された伝説的なミュージシャンの多くが参加）から選ばれた曲で構成されているが、前半はシルバー・ブレット・バンドのよりクラシック・ロック寄りのアプローチが光っている。当時31歳だったシーガーは、この作品でより「大人向け」のロックンロールへと移行した。そのことは、オープニングを飾る「ロックンロール・ネバー・フォーゲッツ」とタイトル曲の2曲から明らかだ。「ロックンロール・ネバー・フォーゲッツ」は、ノスタルジー溢れるジュークボックス的なアンセムのスタイルを確立した曲で、シーガーはその後10年にわたってこのスタイルを繰り返し追求していく。一方「ナイト・ムーヴズ」は、完璧な中速のナンバーで、シーガー自身の体験（歌詞はまさに日記のよう）に深く根ざしていると同時に、1960年代半ばの青春期の単純な時代を懐かしむベビーブーム世代の数百万人にも共感される普遍性を備えていた。この曲は、初期のロックンロール（ギターライン）やクラシックR&B（バックグラウンド・ボーカル！）にさりげなく敬意を払いながら、完全に現代的なサウンド（「3楽章」構成、シーガーのFMロック的な歌声）を実現しており、嫌うことがほぼ不可能だった。そのため、彼初のトップ10ヒットを記録したのも当然の結果だった。「ナイト・ムーヴズ」の創造的・商業的成功はアルバムのチャート上昇を後押しし、同様に映像的なスローバーナー「メインストリート」もシングルとしてヒットしたが、「ザ・ファイアー・ダウン・ビロウ」やウィリー・ミッチェルがアン・ピーブルスために「カム・トゥ・ママ」として書いた曲をファンキーにアレンジした「カム・トゥ・ポッパ」といった力強いナンバーも、アルバムの魅力に同等に貢献している。『ナイト・ムーヴズ』は、荒削りな職人からハートランド・ロックのアイコンへと変貌を遂げるシーガーの姿を、非常に充実した形で記録した作品なのである。 ― ジェイソン・ファーガソン