アラン・テイラーの「オン・ザ・ロード」の日々は過去のものとなった。このシンガーソングライター兼ギタリストは、コンサートツアーの生活から引退した。せいぜい、選ばれた数回の出演があるかもしれない。残されているのは、旅路での出会いや印象を語る彼の歌だ。50年以上にわたり、アラン・テイラーは自身の経験と思いを言葉にし、繊細に音楽として形づくってきた。

彼は今回も新作アルバム『The Road Well Travelled』でこの境地を再現した。この作品は、ノルトハイムのストックフィッシュ・レーベルから過去30年間にリリースされてきた彼の全てのプロダクション同様、録音と雰囲気作りが巧みに施されている。8つの珠玉の楽曲で、アラン・テイラーは自身の芸術的キャリアを振り返る——イングランドの重要なフォーククラブでの日々、ニューヨークでの時代、アメリカツアー、そして数多くの国々での公演が描かれる。新作の楽曲に込められた記憶は『The Last Train』から始まる。『A Giant Red Balloon』では、遥か少年時代へと遡る道程が綴られる。『The Joker’s Hand』は若きデンマーク人同僚ヤコブ・ディネセンとの印象的なデュエットだ。締めくくりのタイトル曲『The Road Well Travelled』では、アラン・テイラーが心に響くスポークン・ワード・ヴォーカルと最小限のピアノ伴奏で、自身の芸術人生全体を旅する。この偉大なシンガーソングライターはここで、円熟の集大成を提示した。ファン必聴のアルバムであり、新たなリスナーを彼の膨大な作品群へ誘うきっかけとなるだろう。