劇場型の『School’s Out』（1972年）と『Billion Dollar Babies』（1973年）の後、アリス・クーパアは『Muscle of Love』でストレートなサウンドを目指した。1973年にリリースされたこのアルバムはゴールド認定を受けたトップ10ヒットとなったものの、前作ほどの成功は収められなかった。オリジナル・アリス・クーパア・バンドとして最後のスタジオ・アルバムであり、プロデューサーのボブ・エズリンを欠いたことで過去の名作ほどの一貫性がなく、埋め合わせの曲も多い。それでも『Muscle of Love』はクーパアの最も過小評価された作品とされ、いくつかの見逃された名曲を収録している。トップ20ヒット「Teenage Lament ’74」にはリザ・ミネリとポインター・シスターズがバッキング・ボーカルで参加。エネルギッシュなタイトル曲もまた有名なハイライトだ。レッド・ツェッペリンを彷彿とさせる「Big Apple Dreamin’ (Hippo)」や優しいバラード「Hard Hearted Alice」が傑作として際立つ。「Working Up a Sweat」とジェームズ・ボンドのテーマ候補として却下された「Man with the Golden Gun」は生のエネルギーを加えている。『Muscle of Love』は今なお忘れられたハードロックの名盤である。