このアルバムに収録されたモーツァルトのピアノソナタは、装飾音や対位法的な主題により技術的に難しい。アルフレッド・ブレンデルはそれらを軽々と演奏し、優雅でニュアンスに富んだ解釈を披露している。彼の演奏は時に力強く、繊細な抑制に欠けることもある。変ホ長調のソナタK.282と幻想曲K.396は、ゆったりとした気まぐれな性格を共有している。ブレンデルは変ホ長調ソナタのメヌエットに予期せぬユーモアを吹き込む。ニ長調のソナタK.576は特に優雅で、狩りのテーマをバランスよく扱っている。彼は対位法的な入りをフーガのように扱い、モーツァルトの古典的な洗練を際立たせている。ブレンデルは微妙な色彩を加え、ソナタの深みと個性を高めている。