『30』は、イギリスのシンガーソングライター、アデルの4枚目のスタジオ・アルバムで、2021年11月19日にメルテッド・ストーンとコロムビア・レコードよりリリースされた。元夫シモン・コネッキとの離婚をきっかけに制作された本作では、アデルが別離に向き合いながら、母としての自分や名声に伴う批判的な目線についても語っている。2018年から2021年にかけて、前作『25』（2015年）でも共演したグレッグ・カースティン、トビアス・ジェッソ・ジュニア、マックス・マーティン、シェルバックら複数のプロデューサーと共に制作。新たにルードヴィグ・ゴランソンやイギリスのバンド「ソルト」のインフロらも参加した。先行シングル「Easy on Me」は2021年10月15日にリリースされ、世界的なヒットを記録。アルバム『30』は大規模なプロモーションキャンペーンが展開され、2021年11月14日にはCBS特番『Adele One Night Only』（オプラ・ウィンフリー司会のインタビュー付き）、11月21日にはITV特番『An Audience with Adele』が放送。さらに2022年7月1日～2日にはロンドン・ハイドパークでの「ブリティッシュ・サマータイム」公演も予定されている。音楽評論家からは、映画的なサウンドスケープと力強いボーカルが高く評価され、ポップ、ジャズ、ソウルが融合した本作は、失恋、受容、希望といったロマンティックながらもメランコリックなテーマに焦点を当てた作品と評された。

大規模な離婚記録が目立つ年——ケイシー・マスグレイブスの『star-crossed』やカーリー・ピアースの『29』——の中で、涙を誘うバラードの女王がそれらをすべて凌駕することは疑いようもなかった。その方向性はエラ・フィッツジェラルドを思わせるオープニング曲「Strangers by Nature」から明らかだ。「私は花を抱えて心の墓地へ向かう／現在も闇の中にいるすべての恋人たちのために／毎年の記念日には敬意を表し、謝罪する」とアデルは歌う。その卓越した声は深く豊かに響き、そして高く舞い上がる。しかし、それでも9歳の息子との録音会話が収められた「My Little Love」の衝撃には備えられない。「ママは最近、大きな感情に押しつぶされそうなの。どんな感じ？ ママは……ちょっと混乱してるみたい。どうして？ わからないの。自分が何をしているのかわからない気がする」。痛みを歌うこととは別に、これほど赤裸々に語られるのを聞くのは、ほとんど圧倒的だ。非難すべき点はたくさんある。アデルは控えめなバラード「Hold On」（「私は本当にめちゃくちゃ／頑張れば頑張るほど後退する」）や、彼女の禁酒以前のキャッチーなキャロル・キング風の曲「I Drink Wine」（「子供の頃はすべてが心を揺さぶった／楽しみのために吸収したけど、今はワインだけを吸収してる」）で自分自身を責める。彼女は重苦しいシングル「Easy On Me」で謝罪し、蜂蜜のように滑らかな「Woman Like Me」では元夫に矛先を向ける（ロバータ・フラックを彷彿とさせながら「自己満足は最悪の性質よ、あなたは正気？／あなたのような男がこんなに怠惰だなんて悲しい」と歌う）。アデルは自身の問題を子供時代と、今は亡き父親との複雑な関係にまで遡り、「To Be Loved」でそれを描く。シンプルなピアノバラードでありながら、彼女のキャリア全体を通じて最も驚異的なボーカルが聴けるかもしれない。音階のすべての音を正確に捉え、純粋な怒りと心の傷を伝える。他の曲では、彼女は痛みを甘い殻の下に隠す。「Cry Your Heart Out」は明るくアップテンポな60年代モッド風ナンバーで、手拍子とレトロなボーカル効果が「私は見えない、幽霊みたい」という歌詞と対照的だ。しかし『30』がすべて悪いニュースというわけではない。アデルは「Oh My God」や「Can I Get It」といった自信に満ちたR&Bを通じて、新しい愛の可能性を探っている。すべては希望の調べで締めくくられる。エイミー・ワインハウスを思わせる壮大な「Love Is a Game」でこう歌う。「愛は愚か者が遊ぶゲーム、でも私はもう騙されない」——シェリー・リデナー