ジャズにおいて、本質的に世界がすべて正しいと感じさせてくれるミュージシャンはほとんどいません。バランスを完璧に保つことは常にイブラヒムの大きな強みであり、源から引き出しながらも新鮮さを保っています。現代の巨匠…彼の優雅な演奏は、力と抑制、密集したクラスターと開放的な空間の均等な配分に支えられています。イブラヒム氏の音楽には、満足感を与える、時には驚くほど美しい休息の瞬間が散りばめられています。

84歳のアブドゥラ・イブラヒム（別名ドル・ブランド）が、4年ぶりの新作アルバムをリリースする。タイトルは『The Balance』で、彼が1983年からレコーディングを続けてきた長年のセプテット、エカヤが参加している。今回のアルバムは、昨年11月にロンドンのRAKスタジオで1日かけて録音された。豊かなホーンライン、揺れるようなメロディ、心躍るコード進行は、アブドゥラ独自のタウンシップ・ジャズの特徴だ。これに対照をなすのは、さまざまなソロピアノの即興演奏で、アブドゥラの音楽的精神のノスタルジックでありながら希望に満ちた性質を象徴している。だからこそ、『The Balance』（バランス）なのだ。彼自身の言葉を借りれば、「私たちは自分たちの快適ゾーンから飛び出します。そうすることで、聴き手に卓越性を追求する姿を提示できるからです。自我の壁なしに聴き手と関わることができるように。これはジャズではありません。私たちにとって、それは壁を超越するプロセスなのです」。