ムッターのベートーヴェン協奏曲は、カール・マズアがニューヨーク・フィルハーモニックの音楽監督として長く務めた最後の定期演奏会でライブ録音されたもので、美しく演奏されたオーケストラパートは彼のリーダーシップへの賛辞である。ムッターは絹のような音色と驚異的な技術的熟達で演奏し、ソロパートの超高音域でもまったくの安泰さを見せ、ピアニッシモの無限のバリエーションを披露する微細なダイナミック調整の驚くべき配列を示している。彼女はフレージングを絶えず変化させるため、天上の美しさの瞬間の後には、しばしば気難しいマンネリズムに陥る。楽器の輝かしい技巧にもかかわらず、結果は不思議と心を動かさず、音楽の感情の深みは捉えどころがなく、彼女のヴィルトゥオーゾぶりは時に危ういほど見せびらかしに近づいている。