『ホームカミング』（1972年）はアメリカの最高傑作であり、デビュー作のフォーク・ポップ・スタイルをより緊密で直接的な楽曲へと洗練させた作品である。長いインストゥルメンタル・ソロは減り、簡潔な楽曲作りに焦点が当てられている。サウンドは明快で鮮やかで、アコースティック・ギターを中心に、エレキギターやキーボードが彩りを添えている。演奏は自信に満ち、情熱的で、バンドのレコーディング史上最高のパフォーマンスの一つと言える。歌詞は時に陳腐だったり難解だったりするが、「ムーン・ソング」「ベンチュラ・ハイウェイ」「コーンウォール・ブランク」などでは、強烈な放浪願望や自然への愛を感じさせる。洗練されたコード進行が、繊細で驚くべき深みを加えている。新たなスタイリッシュな要素として、カントリー風の「ドント・クロス・ザ・リバー」、ハードロック調の「カリフォルニア・リヴィジテッド」、ファンキーな「ヘッド＆ハート」が収録されている。「ベンチュラ・ハイウェイ」「オンリー・イン・ユア・ハート」「ドント・クロス・ザ・リバー」といったヒット曲が光るが、全曲が際立っている。生き生きとしたアレンジと情感豊かなテーマが『ホームカミング』を非常に充実した作品にしている。SACDで高音質版もリリースされているこのアルバムは、1970年代前半のアメリカの絶頂期を確固たるものにした。